「その格好……君も死神候補生なんだろう?」
「やっぱりキミか――」
否定も肯定もせず、冷たい瞳のまま少女は俺を見上げている。
少女の姿が、ヒカルたちとは違って初めから死神装束に見えたのは不思議だった。
でもこの小ささからいって、俺の受け持つ学年の生徒ではなさそうだ。
「――転校してきたばっかりで迷ったのかな?」
もしかしたら、ヒカルよりももっと新米で、うまく変身もできないままこの学園にやってきた死神候補生なのかもしれない。
うっかり大鎌で首をはねられないよう、俺は慎重に話し掛けた。
「よしよし、先生が職員室まで案内してやろう」
「……結構」
「なんだ、遠慮しなくていいんだぞ? それからペットは学園につれてきちゃだめだぞ〜」
「ペット?」
少女は最初不思議そうに眉を寄せていたが、自分の肩にとまっている小鳥のことをさされている事に気付いてか不敵な笑みを浮かべた。
「ああ、ぴよのことか――」
少女にぴよと呼ばれた黄色い小鳥は、まるで俺に何かを話しかけるように鳴いた。
澄んだキレイな声だったが、カナリアだろうか?
なんだか俺に文句をつけている風に聞こえたのが不思議だ。
「他の先生に見つかったら、没収されてしまうぞ」
「……フ」
少女の頭は俺の頭よりずいぶんと下だった。
しかし冷たい瞳の印象は、ひどく威圧的に感じられる。
このままではヒカルと違って、ずいぶん排他的な転校生になってしまう。
「こらこら、いくら死神候補生っていっても、みんなと仲良くしなきゃいけないぞ」
教師として、あと死神候補生騒動に足をつっこんだ者としてここはひとつ注意しておこうじゃないか。
自分のクラスの生徒以外にも気を配る、それこそ俺の目指す教師スピリットだ!
「………」
「――俺の教師スピリット、あっさり無視かよ!!」
無言の少女の赤い瞳からブリザードの嵐が吹き出した。
「さて、どこから説明しようか」
「あ、そのへんの事情は知っているから安心してくれ。死神になるために試験を受けてるんだろ?」
ため息をつく少女の前で俺は余裕の笑みを浮かべた。
昨日から突然踏み込んでしまった非常事態に、もうだいぶ慣れている。
そう、風に舞う長いマントも、手に光るでっかいカマも……日常のフレームの中に収められるようになっていたのだ。
「そうだそうだ、デス先生って怖ぁい人がいるんだろ? こんなちっこいのに大変だな〜」
(何も知らないのをいいことに、いろいろと爆弾発言してしまう主人公…)
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