「ごきげんよう、村上さんのクラスの皆様!」
「え!? バ、バラ!?」
突然視界に飛び込んできたのは、麗しき真紅の花弁を咲き誇らせたバラ、バラ、バラ。
まさしく教室内ラ・ヴィ・アン・ローズ状態。
その中央に、豪快な縦巻きロールをふりかざした生徒が立っている。
「失礼させていただきますわ」
「は、はははい??」
彼女は微笑みを浮かべながら、ズカズカと教壇の方へと闊歩してくる。
その後ろにやや遠慮がちな縦ロールの生徒と、長身のショートカットの生徒を引き連れていた。
「そこをおどきになって下さる?」
「はわっ」
クラス全員の視線を浴びつつ、バラを背負った縦ロール少女に俺は押しのけられた。
よろめきながら教壇からはじかれてしまった俺。
そんな事などおかまいなしに、バラ縦ロール少女は微笑みをたやさず続けた。
「遊華総合学園生徒会会長・華澤響子でございます」
「お姉さま、皆さんご存知だと思いますわ」
「――ミカさん? 人の上に立つ者、いついかなる時でも自己紹介は必要よ。ミカさんも副会長としてそのあたりの自覚をもっと持っていただきたいわ」
「……すみません」
バラをまきちらしながら、生徒会長は副会長を叱責している。
この二人はほとんど同じ顔立ちだ。
少々キツい印象を受ける顔の方が姉の響子で、縦ロールも態度もやや遠慮がちなのが妹の美加。
この双子姉妹は、学園内でもちょっと有名な存在だった。
「あの―……もしもし」
……いや、ちょっとどころではない。
彼女たちは、この学園に在籍するならば知らない者などなしといった存在である。
華澤姉妹――そして眼鏡の奥から冷たい視線で世の中を見つめている、早河忍の三人組。
行くところバラあり敵なし、泣く子も黙る生徒会三人組――それが彼女たちの呼び名だった。
(ホームルームの最中、突然教室に乗り込んでくる生徒会三人組)
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