「むにゅ……ふ」
ゆっくりゆっくりと、ベッドの方へと視線を向ける。
暗闇の中フレーム・インしてきたのは、幸せそうな寝顔のヒカルだ。
「し、しまった、忘れてた……」
凍りついたように立ち尽くす俺とは逆に、ヒカルはベッドの上で枕をかかえこんでいた。
「まふまふ……」
「――ハッ!!」
どんどん暗闇に慣れてくる俺の目に映ったもの――。
それは……。
それは、可愛らしいピンクのパンツだった。
パンツだけならまだしも…いやそれでも充分おかしいが……掛け布団をけり落としたヒカルの
太もも全開図が、シーツの上で繰り広げられている。
「も、も、百瀬――!! ズボンはどこへやったんだぁ!?」
「むーむに、デス……せんせ、ちがっ、ちがうんで…すぅ」
しぼりだすように叫んだ俺への返答は、夢の中のセリフだった。
眼球だけグルグル動かしてベッドの周りを見渡すと、パジャマのズボンは床に放り出されている。
しかも、ぐったりとそれが落ちていた場所は、ベッドからかなり離れた場所だった。
「一体どういう寝相をしたら、あんなに飛ばせるんだっ?」
パンツ丸見えよりも、俺はそっちの方が気になってしかたなかった。
いや、嘘だ。
別に総レースとか、フリフリ全開とか、横のリボンを外したら弾け飛ぶような仕様のパンツでは
ない……のだ。
しかし何の変哲も洒落っ気もないヒカルのパンツから、俺はちょっと目が離せなかった。
写真でも映像でもない、パンツプラス生身の足。
人差し指で押したら、押し戻ってくるような若さ溢れるぷにぷに太もも。
「ぷにぷに太もも………」
「ぷにに?」
そんなものが半径一メートル以内に存在する、それは俺にとってUFOが部屋の中に墜落してき
たのと同じくらいありえない。
非常に悲しい現実だが、今までの俺の人生に、ありえなかったのだ。
パンツ一枚で始まった俺の人生禅問答などつゆ知らず、ヒカルは抱き寄せた枕に頬ずりしている。
「ふぅ、むにゅ……」
(同居一日目にして素晴らしい寝相をさらすヒカルさん)
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